2016年01月05日

石場建て(風)が建築基準法内でようやく位置づけされる

昨年は、MJK463ノートに何の書き込みもしないまま終わってしまった。
その反省でもないのだが、日頃の取組にも関係する興味深いパブリックコメントが出ていたので、それに関して。
内容はこうだ。

  「建築基準法の一部を改正する法律の一部の施行等に伴う関係政省令・告示の制定・改正案に関する意見の募集について」

  ・案の公示日: 2015年12月04日
  ・意見・情報受付締切日: 2016年01月02日
この中に建築基準法施行令で以下の石場建て、火打ちに関する要件が含まれている。 
(2)伝統的工法の利用促進のための規定の合理化
 @柱と基礎との接合方法として、国土交通大臣が定めるだぼ継ぎ等により接合する方法を追加することとする(第42条第1項)。
 A床組・小屋ばり組の変形防止方法として、火打ち材を使用すること以外にも、木板その他これに類するものを国土交通大臣が定める基準に従って打ち付けることを認めることとする(第46条第3項)。

「石場建て」というのは柱を礎石の上に載せて、その柱に横架材(足固め)を組んで軸組を固める方法。今まで基準法内では、一部の例外を除いては、必ず土台を設けなければならないという規定であった。
古くからある民家や町屋などでは土台を設けずに「石場建て」で建てられていた。そのため、基準法ができたときに土台の設置を規制したことによって、それまでの建物のほとんどが既存不適格(法律ができたことによって、法律に適用しなくなってしまう状態となってしまう建物)になってしまった。 
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 ただ、江戸時代の後期には、積極的に土台を設けて建てられる方式も改良型として造られてもいる。石場建ては、いわゆる伝統構法の特徴を表す工法ではあるが、土台を設けるとが伝統構法ではないということではない。基準法が技術の選択肢を減らしてしまったことに大きな問題があった、といえるだろう。

 ただし、基準法の制定は昭和25年で、戦後の混乱状態の続く中にあって、特に都市部で大量に住宅供給が必要な状況下において、一定の技術水準を維持するための規定の制定は、その当時としての要求であったと考えたほうが良いのだろう。当時、地方でちゃんとした大工技術で建てられるような建物にまで目を光らせる必要もなかったし、施主と棟梁の信頼関係で造られているものにまで、役所がとやかく言う余裕もなかっただろう。

 法制定で問題になるのは、制定当時の時代背景による必要性から、とにかく規制すべき事柄に対して、そうしてきた訳だが、その背景が変わってきたときに、その規制の枠だけでは弊害になる場合が生じてくることへの対応がしづらいことだ。法制定をする際に、そこまで思い至るほどの余裕もないからだろうが、将来にどういった弊害となるかまでは予測していないためだろう。

 私たちが、伝建地区等で見るまとまりのある街並みに建つ民家を成立させていた状況を、少なくとも現在の建築基準法は後押しできる内容となってこなかったことが大きな問題。その端的な構法の要素の一つが「石場建て」であった。昨日までやってきたことが今日から法規制の上では普通にはできなくなる(できにくくなる)というのが困りものであったのだ。見方によれば、木造技術の衰退にもつながってきたし、美しい街並みを維持、更新していくことへのブレーキにもなった部分も多い。

 ともあれ、「石場建て」が基準法にようやく位置付けられることになる。ただ、これも厳密には「石場建て風」なのかもしれない。「国土交通大臣が定めるだぼ継ぎ等により接合する方法」でなければならないので、これは告示で後日示されることになるはず。

 だぼ継にする意味は、建物の水平移動は拘束すること。ただし、基準法が想定する地震動には引抜きが生じないことまでの確認が要求されており、それを超えるような場合には、上下動までは許容してもよいだろうということと理解できる。土壁の建物でも実大実験では巨大な地震動で柱は浮き上がった。

 巨大地震に対して、水平移動を拘束する方が建物にとって安全側にあるのか、危険側にあるのかは建物の形状、脚部あるいは床下部位の一体性がどの程度確保できるのかなどで一概には言えない。短絡的に移動すれば安全だなどと言ってはいけない。一体的に脚部を固めるのは建物規模が小さければよいが、大きくなればそんなに簡単なことではないだろう。

 このパブコメの段階では、告示内容は分からない。しかし、告示の仕様が現場に直接影響するので、どういったものが示されるのかがとても重要になる。

Aの火打ち材の規制も選択肢を増やす内容であるので、ようやく木造の多様性を広げる方向につながっていくことは期待される。木造耐力壁ジャパンカップなどで数多くの試験体を見ていると、告示以外にも性能を確保できる仕様はいくらでも実現できることは直観でも分かること。

 これも告示に示される仕様を見てから考えたいが、厚板等を用いた床板や野地板などの可能性は相当前(30年以上前に「いえづくり85」なるプロジェクトがあり、その中で具体的提案もなされていたが、一般解として位置づけられることはなかった)から分かっていたのだが、法の仕組みに乗せるまでに、あまりにも時間がかかってしまったな〜という感じだ。

 今回の改正施行令に書かれている内容は選択肢が増やされることであり、とりあえず「良し」としてよいのだろう。ただ、これもまだ通過点であってほしいし、さらに選択肢が増えることになるのかが気にかかるところ。

 かつて行われていた伝統的構法の設計法の委員会の成果が未だに社会に活かされていないし、蓄積されたであろうデータも使える形でほとんど表に出ていないことはどうなっているのだろう。「研究」ではなく「プロジェクト」であったはずなのに、「残念!」。(ちょっと、愚痴っぽくなっちゃいましたね)

 伝統構法に関しての話題としては、構造的な基準もさることながら、改正省エネ法による「温熱基準の義務化」によるインパクトの方がはるかに多きい大問題。単純には、真壁造ができないというとんでもない状況が現時点では進行している。日本の建築の形を根底から変質させてしまいかねない大きな事態となっている。が、この問題については、また改めて。
posted by 太郎丸 at 19:36 | Comment(0) | 伝統構法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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