2006年11月23日

「木の家」に住むことは「森」に住まうこと

■山の木は人が手をかけて育てている
 日本の山の杉や桧の多くは、人の手によって植えられたものです。何代にもわたって育てられてきました。しかし、植えた木が山の人たちに経済的に還元されるのは、伐採し製材されて建物に形を変えるとき。使える木になるまでには30〜50年。あるいは100年近くの長い時間がかかります。

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 今日、植えた木は、子供や孫のため。今日、伐った木はお父さん、あるいはお祖父さんの植えた木。そんな話を木を伐採する山の現場でよく聞きます。伐採した切り株を見て、年輪を数えると、70数本。これはお祖父さんが植え育てた木なのでしょうね。この植え、育て、伐るのサイクルが代々受け継がれて山が維持され、森として自然が守られているのだと思います。産業としては、いちばん時間を必要とするものでしょう。瞬時の判断で大きな取引が行われる今の時代では、林業を産業としてだけ見てはいけないように思います。

■山は都市に恵を与えてくれている
 山を維持するためのこの長い時間は町に住む私たちにとっては、山の緑であったり、飲み水であったりなど治山治水による恵をもたらしてくれます。山と都市はうまく共存していかなければならないことはわかっているのですが、課題も多いようです。
 伐採の体験見学会などで山に入るとなんともいえぬ気持ちの良い経験をします。知らずに深呼吸しています。そして、す〜っと伸びる杉を見上げると太い幹、力強く張り出した枝、青々とした葉、その向こうに見える青空などなど、実に気持ちが良いものです。それも人が手をかけてきたからなのです。

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 伐採はチェーンソーを使いますので、太い幹でも数分で伐り倒されてしまいます。木が育ってきた長い時間を考えると、ゆっくりとそしてドドーンと地響きをあげて倒れる姿を見るのは、ちょっと複雑な気持ちになります。年輪にはその長い時間がくっきりと刻み込まれています。仮に年輪が70本あったとしたら、70年前の1936年に植えられたということですから、昭和11年で2.26事件のあった年ということになります。
 その長い時間を考えると大切に使ってあげなければならない、と思うのです。設計という立場では見学体験としてでしか伐採に関わる機会はありませんが、毎回その場所に応じた思いはあるものです。伐採は次なる生として産声をあげた瞬間と考えたいですね。

■住宅に使われるまでにも時間が必要
 伐採された木は、葉枯らしされ、玉切りされ、土場に運ばれた丸太は製材所で梁や柱の断面に製材されます。残念ながら伐採された新鮮な木はすぐに使えませんから、住宅に使えるようになるまでにはここでも時間がかかります。木の水分を抜き取ってやるために、しっかりと乾燥させることが必要になるわけです。その方法は可能な限り天然乾燥が望ましいと考えています。木組みの家を造ろうとする場合には、木の癖をしっかり出すことが大切で、人工的にエネルギーをかけて水分を抜くことは望ましいことではない、と考えたいですね。それは短時間で乾燥はできても本来の癖を出し切れないだろうと考えるからです。

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■都市で森を再生できる木組みの家づくり
 棟梁の手元に届いた材木は、墨付けをし、鋸や鑿で刻み、鉋で仕上げて木の家の骨組みが加工されていきます。建て方は、その骨組みを現場で組み上げることです。このとき大黒柱が立ち、通し柱が立っていくときの姿を見ると、伐採の時に山で見たあの光景と重っるように思えます。そして、そのときに感じた気持ちの良い感覚が再びよみがえってくるのです。木の家は森の中と同じなんだという感じ。完成した木の家の室内の空気が心地よいのも、時間が経って馴染んでくるのも木という素材であるからこそと思うときです。

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 環境問題が叫ばれる昨今では、山を大切に守り、維持して行くことと、都市に木の家を建てることは、環境保全の両輪として考えたいところです。

 「木の家を建てることは都市に森を再生すること。
   人はもともと森(自然)の中で生活していました。」

最近の幾つかの仕事を通じて強く思っていることです。
 木の家のよいろころは、人が手をかけ育てた木を、その特徴を知り生かす木組みの技術で刻み、組み立てることによって得られた空間にはそれぞれの思いが詰まっていることがわかること。木を植えたところから考えると100年近い時間が木の家にはかかっていることです。そこに住まう人もその家を代々受け継いでくれるならば、200年以上の物語になります。今の時代にこんなに長い時間を身近に考えられるものは木の家しかないかもしれません。

関連:
 1)伐採見学会の例
 2)建て方の例

posted by 太郎丸 at 17:38| Comment(0) | 家のことなど
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