木造耐力壁ジャパンカップを仕掛けてきた稲山氏、岩崎氏たちとビールを飲みながら会話しているときに、彼らから自嘲ぎみにでてきたことば。
壁なんか引っ張って、壊して何が面白いの?と言われる方にはちょっと分かりにくいところかもしれない。しかし、壁なんか引っ張って、壊すだけなんだけれど、これがけっこう面白い。だから今年で8回目にもなっている。

耐力壁といってもエントリーの壁の造りはてんでんばらばら。ひたすら強い壁にしようと面材を使い固め、柱脚柱頭をボルトでしっかりと固定したもの。あるいは、金物にたよることは一切せずに、貫、込み栓、楔など、木と木の関係だけで、自らの施工精度を高めて粘る壁を目指したもの。昨年は、ガラスや縄など使用材料にも従来と発想を変えたものが登場するなど、創意工夫のオンパレード。たかが壁であるけれど、それぞれに出場者の意思の表明であり、されど壁といったところ。
出場者は同一のルールでいかに自分たちの考える性能を発揮しようと工夫し、施工するわけで、他の参加者の考えと自分たちの考えの比較ができ、その結果を目の前で検証できる。技術者にとっては、これってけっこう面白い。リピーターが多いことからも壁道楽者が増殖している。強ければいいってもんでもないところがルールを読み解くカギ。(公式ホームページ参照)
実務上では、法規の仕様規定で示された木造の耐力壁で、筋交いと面材耐力壁がその一般解。その数少ない仕様の中から選択して使っているというのが現状のほとんどだろう。それはそれで何も問題はない。そうなのだけれど、耐力壁としての性能があれば、必ずしもそれだけで事足りた、とすることもない。事足りたと考えてしまうことは、技術の停滞につながってしまうと考えたほうがよい、と考えるほうに一票。
一昨年、土壁の倍率が3倍(1.5)になったことや、落し込み板壁、格子組壁が耐力壁として告示(土壁告示)で位置づけられたことは、耐力壁の仕様に幅を持たせる意味でも画期的なできごとであった。この告示に大なり小なり関わったり、関心を寄せていた研究者や実務家にとっては、従来の仕様だけでは本来の木造としてはどうもうまくないという思いがあったと推察する。阪神大震災以降の木造に関係する動きはそれ以前と比べると格段に進んでいる。その動きの成果の一つと見ていいだろう。個人的には、格子壁は仕様そのものとして一般性があるのかないのかちょっと疑問なのだけれど、木造の可能性の一歩前進(三歩ぐらいかもしれない)という点では今までにない相当に画期的な仕様であることは間違いない。
注意しなければならないのは、これらの仕様のさらなる可能性を、告示という狭い領域に閉じ込められないようにしたいものだ。特にこの3つの仕様は、それを造る職人(大工、左官)の技量によってその性能が大きく左右される。本来、彼らの材料を見て、手で考えて答えを出すということは条文にはなじまないし、条文で想定していない領域にまで気を使っていなければ、土壁告示は成り立たないと考えたほうがよいと思っている。幸いにも、まだそれを実現できる職人たちは数多くいる。というよりも、そのような職人が増えつつあるようにも感じられる。ジャパンカップに参加する学生たちの多くも、将来の棟梁あるいは技術者候補であるし、参加体験した経験から学んだ技術は、単に壁の強度や耐力だけでなくその周辺技術も理解するうえでまたとない機会でもある。
告示としてさまざまな仕様の壁(耐震要素)が示されることも良いだろうし、実験等によって「性能を担保する仕様」を明確に提示でき、多くの職人、技術者が活用できる仕組みを作れるともっと良いのだろう。特に、木造の技術は使い続けられるものでなければ、どんなに優れたものであっても次代には生かされない。

[私家版仕様書研究会で参加した格子壁 2001年]
今年は22体の耐力壁がエントリーしているらしい。カベ道楽者のひとりとして昨年に引き続き私も審査でお手伝いをすることになっている。実際に壁を提案して出場する方が面白いのは経験者として分かっているけれど。今年もあずけとなってしまった。
でも、今年の参加者の工夫にどのようなものがあるのか、道楽三昧の3日間になりそうだ。(^o^)v
※関連事項 木の家ネット 伝統の復権 土壁告示をめぐって

