2012年01月18日

90年以上の耐久性 モルタル掃き付け仕上げの下地

武蔵豊岡教会堂・その3

ひき続き、教会堂に関して。
教会堂の小屋裏に上って驚いたのは、小屋組の構成が変わっていたこともさることながら、妻面の外壁の健全さでした。正確には小屋裏側から見たものですから、外壁下地ということになります。木摺(きずり)といって薄い細幅の板を間隔をあけて張りつけたものです。
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この部分は、小屋内部からはむき出しですので良く見えます。今ではこういった造り方は特殊ですが、建設の当時は、木摺に漆喰を塗り付け、それを下地としてモルタル等を塗ることは工法として一般的な洋風建築の仕様であったのではないかと思われます。
三角形のこの妻面には風雨が相当に吹き付けていると思いますが、90年経った今でもしっかりしているように目視の範囲では思えました。雨に濡れてもすぐに乾燥できる環境であるからなのでしょうか。付け柱や付け梁のところで光も漏れていましたから適度に隙間もあり、湿気が滞留しなかったのかもしれません。
仕上げはモルタル、ましてや掃き付けの工法で空隙の多い仕上がり状態になりますので、仕上げ面そのものの吸湿性は相当に高いものと考えられます。
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下塗りの漆喰あるいは砂漆喰がこの湿気をバリアする役割を担ったと考えられます。蔵や民家などの漆喰塗りはそれ自体が外壁の仕上げですから、建築の外壁素材として優れた性能を持っていることが分かります。
今はアスファルトフェルトなどの防水紙で雨は防ぐという考えですから、そういった今の目で見ると新鮮な驚きでした。
左官素材の層構成で対処しようという方法です。木摺に漆喰が今でも健全な状態が保たれていたのは木と漆喰が馴染みが良いことの証でもあるでしょう。
(このことは、別の建物でも確認できました。これは後日)

小屋裏の外壁面ですので、断熱材は取り付けません。想像するに、室内に面する外壁も同様の仕様と思われます。冬は寒いと教会の方から話を聞いたことがありますが、室内空間も大きいこともあり、当時のままでは断熱対策もしていないでしょうから、今考える温熱的には不利な状態だろうと考えられます。
しかし、昨今は温暖化が騒がれていますから、建設当初より若干は状況は違うかもしれませんが。(笑)

もし、壁に断熱材が入っていたらどうなっていただろう、と古い建築を見るたびに思います。木は濡れても乾けば耐久性のある材料です。屋根で雨漏りしても、雨が止めば乾くため、すぐに腐ってしまうというようなことにはなりません。断熱材が入っていて、もしそこに雨水や結露水が滞留してしまう状況が続くとカビ等の発生しやすい環境を作り、建物の寿命を縮めてしまう可能性は高まります。
同時時期に西洋館も並行して建設されていますから、共通した何かの方策があるかもしれません。当分の宿題としておきます。

教会堂の外壁仕上げは、ヴォーリズの建物ではお馴染みのスタッコ仕上げ(ドイツ壁とも呼ばれている)。工法的には、モルタル掃き付け仕上げと呼んだ方が良いのかもしれません。モルタルを竹のササラではじき飛ばすように掃き付けるのだと聞いていますが、まだその施工法は見たことはありません。そんなやり方でモルタルがうまく付着するのかと思うのですが、うまくいくらしいのです。
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  (展示写真を複写)  

竣工当時のモノクロ写真を見ても、現在とどの程度色が変わっているのかは分かりませんが、あまり大きな変化があるようには感じられません。90年も経っていますから、汚れは相当にあるはずなのですが、凹凸の大きな仕上げであるため、建設時から明暗等の変化があまり変わらないように見えるのかもしれません。
出来たときにピカピカしていない仕上げという感じです。

ヴォーリズの活動の本拠地の近江八幡には、同様の仕上げの建築が多数残っています。うまい具合に古びていて、左官仕上げの手法としても好感が持てるものです。


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 池田町洋風住宅街
 
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ウォーターハウス記念館
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修復されている。色粉を入れた色モルタル。
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旧八幡郵便局
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旧伊庭家住宅
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破損した部分からのぞくと土壁が見えた。
土壁を下地としているものと思われる。

ドイツ壁は、掃き付けたモルタルですから空隙もあり、雨には水も吸い込み滞留時間も長くて建築には不利ではないかとも思えるのですが、実際に耐久性が十分あることを目の前の建物が実証しています。
時間に耐えてきた建築、材料よりも職人たちの手間がかけられた時代のものには、学ぶものがたくさんあります。灯台下暗しで地元にある良い建築を意外と知らないことを反省しました。
[2011・夏]

[参考]

(社)日本左官業組合連合会
     セメントモルタル塗のテクスチュア にドイツ壁が紹介されています。
     http://www.nissaren.or.jp/452
手元にあった資料に「掃付け仕上げ」の解説がありましたので載せておきます。

誰にでもわかる左官工学(鈴木忠五郎著)
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posted by 太郎丸 at 18:34 | Comment(0) | 家・建築のことなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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