2011年12月24日

武蔵豊岡教会堂と西洋館(入間の建築)

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W.M.ヴォーリズ設計による教会堂が入間にあります。
武蔵豊岡教会は1889(明治22)年に創立され、その教会堂は1923(大正12)年5月に献堂式が行われています。
大正12年といえば、その9月に関東大震災が起こっていますが、当時の記録からはこの地域の被害はあまり大きくはなかったようで、教会堂もその影響を受けてたということはなかったようです。初代の教会堂(天裕堂)は、一人の信者から捧げられた酒蔵を解体して造られていました。現在でも今の教会堂の横に建っており、当初は牧師館として、現在は収納物等を納める建物として活用されています。こちらの建物も木造建築のリノベーションとして考えると興味深いものです。酒蔵を解体し教会堂へ、それを現在の場所へ移築されています。
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教会堂(左)と天裕堂(右)
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ヴォーリズは、大正から昭和期に多くの住宅や教会堂の建築を残している建築家ですが、建築家というよりは聖職者として、建築を造ることを通じて広く活動していたと考えるほうがよいのではと思えます。彼の業績を記した書籍からはそのように読み取れます。メンタームで有名な近江兄弟社の起業も聖職者として、その活動基盤をつくるためのものであったとされ、実業家としても興味深い人物といえるでしょう。s2011_0508-2_001.jpg
建設当時の天裕堂
現在、教会堂の建つ場所は河原町となっていますが、江戸時代に作られた古地図を見ると河原町の名は無く黒須と呼ばれていました。黒須はクロス(cross)で十字架に通ずるものと考えてもよいかもしれません。地名は偶然であったかもしれませんが、この地に建つべくして建てられたものなのかと想像できなくもありません。

この教会堂は、当時日本でも有数の石川組製糸(1893年設立)の創業者石川幾太郎(1855-1934)により、用地提供と多くの建設の費用の献金により建設されています。これは、熱心なキリスト教信者である弟の和助から大きな影響を受けたものと言われています。黒須には石川組製糸の大規模な工場群などが建っていました。s2011_0503_062.jpg

大正のこの時期に幾太郎は、教会堂の建設だけでなく、世界との取引に伍していくために、内部装飾に贅を凝らした迎賓館(西洋館)の建設も同時並行で行っており、竣工もほぼ同時期のようでした。田舎の町に、2大建築プロジェクトが行われていたことになります。
これらは、当時の石川組製糸の隆盛を象徴するシンボル的な建築といえますが、建物が求める機能はまったく異なり、動と静とでもいうような対照的なものです。ちょうど、日光の陽明門と京の桂離宮のような対比にも似たような関係に思えなくもありません。当時の製糸会社を経営し、激しい国際間での企業競争の中で、事業展開と企業の象徴としての西洋館。一方、対照的に静謐な心の表象としての教会堂というように、一人格の中で幾太郎はバランスをとっていたのではないかと思えるのです。
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二つの建築は、現在は交通量の多い国道16号で分断された位置関係になっていますが、当時は道路の位置関係が異なり、一団としての配置計画がなされていたものと思われます。西洋館の北側には製糸工場群(現在の黒須団地のあたり)が並んでいました。

教会堂は、製糸工場ではたらく多くの女工さんたちの教育の場としての大きな役割も担っていました。田舎に建つ教会堂として比較的大きな規模である理由のひとつとなっています。

入間の文化や産業、教育に関して、その成り立ちから考えるときに、この2つの建築は、地域にとって貴重な財産となっています。
西洋館は、平成13年に登録文化財に登録され、市が管理しています。年に数回一般公開のときに見学できます。
教会も基本的にはオープンな対応をしていたけるので訪ねてみることはできるでしょう。今年の夏に、学生と見学させていただいて貴重な発見もできましたので改めてまとめてみます。

※参考
武蔵豊岡教会:http://www.musashi-toyooka.jp/
西洋館(入間市HP):
http://www.city.iruma.saitama.jp/bunkazai/bunkazai/seiyoukan.html

posted by 太郎丸 at 14:14 | Comment(0) | 家・建築のことなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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