2011年11月22日

ヴォーリズ晩年の市川教会堂

昭和30年に竣工した日本福音ルーテル市川教会会堂は、ヴォーリズの晩年の作品と言われています。ちょうど3年前に登録有形文化財として登録されました。
今ここが、現在修復工事中で、知り合いが工事に関っていることもあって、見学させていただきました。s2011_1121_ 002.jpg内部に入ると、工事中で雑然としていますが、大きな空間を特徴づける小屋組みが目に入ってきます。梁間は母屋の本数からすると4間程度で、キングポスト形式のトラスが掛かっています。
s2011_1121_ 088.jpgトラス尻は装飾を施した方杖で補強されており、天井板には繊維版がそのまま張られています。

この教会堂はトラスの小屋組みが、そのまま見えています。「この」というのは、私の住む入間にも、ヴォーリズ設計の武蔵豊岡教会堂(大正12年竣工)があるのですが、入間の教会堂では折り上げの格天井が張られているために、小屋組みを直に見ることはできません。
教会堂としては天井が張られているほうが珍しいのかもしれませんが。

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s2011_1121_ 022.jpgまた、梁間も6間と広く、ふたまわりほど規模は大きい感じがします。しかし、アーチ状の祭壇やその周りのしつらえ、窓の配置、2階席の感じなどに類似点も見られます。
教会堂の一つの型と言えるのかもしれません。
実は、入間では隠れていて見えない小屋組みの構造形式も実は類似した形といえます。これについては改めてまとめてみようと思います。
市川教会堂も老朽化し、各所に痛みがでて手入れの必要な段階になっています。その一番は、地盤の不動沈下により床に相当の凹凸が生じるほどになっていたそうです。床の不陸を直すために基礎の補強を行うと同時に木造架構の耐震改修も行うというのが今回の工事の目的となっています。


ちょうど現在は、既存の基礎下に杭を打ち込む工事がほぼ終わり、建物の水平も出して、土を埋め戻す工程に入る直前でした。教会堂の外側だけでなく、内部の床も剥がして土がむき出しで、ところどころに深い穴が開いています。この穴は、杭打ち工事のために必要なのです。

s2011_1121_ 038.jpgここでは、アンダーピニング工法という杭打ちの工事方法でした。建物位置をそのままでも行える工事です。基礎の横位置から穴を基礎下まで掘り下げ、鋼管杭を基礎下にセットして、油圧ジャッキで何本も継ぎ足しながら支持層に達するまで打ち込んでいきます。この時、建物の荷重が杭打ち込みの反力となっています。杭を支持層まで打ち込み終われば、逆にその杭を反力として、基準の水平になるまで、基礎全体を少しづつジャッキで押し上げていくという手順になります。 
杭の打ち込みには古い建物の基礎やその上の建物の荷重を反力としているため、その部分がしっかりと丈夫な構造となっている必要があるのです。ジャッキの伸びと杭のもぐり込み具合、建物の歪み具合などの按配で作業を進めるということのようですが、ここにも職人技の世界がありました。


この作業がたいへんであることが、掘った穴を覗いて見るとよく分かりました。背景に丘があるので地下の水位が高くなるため、穴に水が湧き出ていました。不同地以下の原因もこの地下水位の影響によるところが大きいのでしょう。建物をどんなにしっかり造っていても、地盤に不都合があると建物へのマイナスの影響が大きくなってしまうということを改めて確認しました。


今日は天気も良く、川沿いに建つ白い教会の姿は青空に良く映えていました。この場所の風景としてしっかりと納まっているといった感じです。まだ、足元の工事段階ですので建物の姿を見ることができましたが、外壁の補強や他の改修工事へと工事内容が上に向かっていくと、足場が掛けられ、その姿は見えなくなってしまう時期がくるでしょう。

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手入れをしながら使い続けていくことは、ごくごく普通のことであると思っています。少なくとも木造の建築ではそれが可能なことは、日常的なこととして分かっているはずなのですが、そうならない例も残念ながら少なくありません。


この教会堂では、受け継いできた時間と空間を、未来へ受け渡すことを実現しようとしています。建物は、戦後10年目に建設しているので、予算も厳しく、高価な材料など使える状況など無かったことが十分に想像できます。それだけに、当時の教会の人々の思いを具現化したときの喜びがいかに大きなものであったのかも伝わってくるように感じられました。


残して活かし、使い続けられるものを持っていることはとても貴重なことですし、二代ほど前の昭和の人々の思いを、平成の人々が受け継げることも、またうらやましい限りでのことです。建築というものがそういった役割のあるものだという確認を改めてできて、心地よい見学となりました。


来年の夏に修復工事は終わる予定と聞いていますが、この場所に再び新たな姿で現われるのがとても楽しみです。

  [2011.11.21]
posted by 太郎丸 at 11:33 | Comment(0) | 家・建築のことなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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