2011年09月18日

木造架構の一つの型

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「伝統構法」の定義はなかなか難しい。「これが伝統構法だ」と言った途端に「そんなもんは本物やない!」と言われてしまうでしょう。
「本物の伝統構法はこれや」と標榜する方々も世に実に多いですし、技術を受け継ぎ、工夫し、人も育ててもいます。つくづく日本の木造は多様ですごい世界なのだと思います。

差鴨居、通し貫、石場立てと古い民家などにある要素技術を並べ、その要素を集合させて構成したものであれば伝統構法と言えるのか、はなかなか難題です。とは言いながら、それらの要素がちゃんと用いられていることは、その部分から見た場合には、やはり伝統構法的にはなるだろうと思えます。
 
 川崎の民家園などで公開展示されている民家は伝統構法による建築と考えてよいでしょう。報告書を読むと民家園に移築前の形がそのまま再現されているとは限りません。移築当時の関係者の判断で変更等が加えられている部分もあしますが、何棟もある民家を伝統構法の型や類型をざっくりと捉えて仮定した座標軸を設定してもよいのではないかと考えています。点として考えることは難しく、ある程度タテヨコに幅を持ち、面として緩やかに捉えた方が感覚的にもよいように思えます。もともと、建っていた場所の地域性や仕事をした棟梁の流儀などによる違いもあることでしょし、○○造りといった形式の違いもあります。

これらに共通するものは何かと考えてみると、その場所で、建物を長く持たそうという意識(結果としても長寿命ともなっている)があり、そのためには素材の特性を理解し、活かす技術によって構成されていると考えると素直に理解しやすいのです。その技術が伝統構法と捉えてよいのではとも考えています。
と言っても、「素材の特性を理解し、活かす技術」そもそもこの共通理解が、なかなか難しいのですが。

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架構をどのように構成するのか。接合はどのように考えるのか。ああすればこうする的に、マニュアル的な考え方はしないほうが良いのですが、この検討模型に見るような基本骨格はあり得るように考えています。

2階床組は3つのタイプとしているのでちぐはぐになっていますが、この模型の特徴は、1階の柱脚部の土台と足固め(実際には通しの地貫でも良いだろう)の組み合わせのところです。ちょうどハシゴを横にして、軸組みの通りの一体性を確保したいという発想からきています。 
ここで言う一体性とは、強度を増すということでなく、変形しても粘り、ばらばらにはなりにくい要素を複数部材の構成により実現したいという考えです。変形はいくらしても、実質として建物が倒れないことが重要と考えています。
事例で見ればこのような感じになります。
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 ▲立ち上がりのないコンクリートスラブの上に木造架構
 を載せて、検討模型と同様の構成を意識しています。
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 ▲外周に布基礎が立ち上がっているため、中通りを検討
 模型の考えで構成しています。

かつての民家に見るような土間部分と座敷部分は、構造的に足元は切り離されています。力の入り方によっては股裂き状態になってしまうように思えます。現代にあっては、かつてのような土間の存在を取り込むことは少ないため、この足元に土台を回し、その上に足固めを床束で縫って複合梁のようにする方式は現実性があると考えています。
江戸時代後期の民家などでもこういった構成が見られ参照できる事例もあります。土台が地際(30cm以下であってもという意味)にあることだけで耐久性上の不安要素とはならないものと考えられます。
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  ▲大原幽学自邸 土台+足固め 分かりやすい事例
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  ▲林家住宅 下屋部分の土台+足固め(一筋より内側
 の部材)でその間に貫も入っていて3段の構成。
 上屋柱部分でも土台に足固めあるいは太い貫が通さ
 れてる。大原幽学が指導し計画。

模型では表現できていなませんが、軸組みには通し貫が入っている前提です。1階の内法の高さには内法貫、あるいは構造的な長押が取り付くことを想定しています。
2階にあっても、内法貫あるいは長押の存在を意識したいのですが、階高を低く押さえようとすると、軒桁の下に内法貫を入れ難く、その部分の整理が今のところ未消化になっています。
基本的には、同一方向に流れる2部材以上を組み合わせた構成要素を軸組みの中に組み込むという考え方で整理できないかということです。通し柱と管柱も1階、2階を通しで見れば複合された架構と見ることができます。それに横架材や貫が、貫くあるいは貫かれて、木の籠のように構成できれば軸組の粘り強さにつながるものと考えられます。これに土壁や板壁などをはめ込むことによって構造躯体として成立します。
各部の接合は複数の選択枝から判断していくとしか言いようがありませんが、材の種類、実際の長さ、その取り付く場所の要求条件などから判断することになるでしょう。基本的には木と木の関係だけで処理するととします。
下図も柱回り、2階の床周りの多様な接合部を総合図として解説用にかつて描いたものですが、一つの建物で考えたらこんな組み合わせはなく、ちぐはぐな感じの図となっていいます。細工の方法から考えても差し口などはまだまだ答えはいくらでもあります。

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 ▲木造住宅[私家版]仕様書等の解説図
 
建物が大きな水平力を受けたときに、まともに耐力勝負するのではなく、一定以上の力であれば、力をかわすことが有効であることはわかっています。免震あるいは絶縁の考え方です。しかし、これを実際の建物として再現することは今なお難しい課題です。
しかし、地震後の調査のたびに建物が移動して大損傷を免れたという話を聞ききます。少なくとも建物の足元が一体とは言わないまでも、一定の範囲でまとまりをもって移動できたことによると理解するのがよいのでしょう。
この模型の場合には、土台下に堅木や石で造ったネコ土台を履かせ、基礎上を滑る程度の工夫は簡単にできと思います。多少基礎を踏み外しても、土台がつながっている効果は大いに期待できます。
s2004_1208_01_0641.jpg新潟中越沖地震の被災地の調査に行ったときに、土台があったことが有利にはたらき、地滑りのために足元の地盤が崩れても建物の一体性を保て、倒壊を免れていたものを見ました。
これは常に程度の問題ですが、軸組の4辺をしっかりと構成しておくこと、特に足元での備えがポイントとと考えます。
そういったことによる可能性をこの型には期待しているのです。
[2011.09.18]
▲地滑りにより建物の際の地面が崩
 れ、建物のが浮いた状態になって
 しまった民家。
 1階の床は壊れて抜けていました。
posted by 太郎丸 at 12:41 | Comment(0) | 伝統構法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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