2010年12月29日

実験続きの年末年始

毎年、実験といえば木造耐力壁ジャパンカップへの協力等で秋に数日間、木造の構造実験に関ってきた。木耐JCは実験というよりは競技会だから実験みたいなものと言ったほうがよいかもしれない。
今年の後半はいろいろな実験に関る機会が増えた。
2010_1217_122S.jpg私が参加しているNPOで木造の構造実験を12月に4体行った。試験場は木耐JCでおなじみのものつくり大学。試験の実施は小野准教授。まさに木耐JCの実行委員だ。

実験の目的は、厚板を使った木造床組みの剛性の確認をしようというもの。最近では3〜4cmの厚さの無垢板を2階床に使うことも標準的な仕様としている設計者や大工棟梁も多いのではないか。いわゆる踏み天井と呼ばれるもので、古い町屋などでもよく見られる方法だ。 
  

現状の建築基準法では、木造はとりあえず固く造ることを良しとする法の組立になっていると考えるのが妥当だろう。とにかく固める方法が仕様として告示などには具体的に明示されている。多くの場合はその仕様(火打ちなど)に従うことになる。ただし、構造の安全性を計算等で確認すればよいということになっているので他の方法の可能性を否定してはいない。
また、品確法の中には耐力壁の壁倍率と同様に、床倍率という考え方で床の固さを表現し、いくつもの仕様が提示されている。ただ、もう少し違ったものも用意されても良いのにと思う範囲に留まっているのが現状だ。

今回の実験は、それら法が示す仕様と異なり、厚板を用いた床組みの構成でどの程度の性能が実際にあるのかを確認してみようということが目的である。無垢の厚板を使う理由は、あくまでも工場生産された合板等ではない自然素材そのものの方が、少なくとも家づくりにあっては「良」であると考えているからだ。合板は構造面では優れた材料であることは間違いないが、合板を使わずとも無垢板で同等程度に対応できるのであれば、住宅ではそちらを優先したい。合板の耐久性への疑問や接着剤の人体への影響、エネルギー的な視点、将来廃棄される時の問題等々理由は挙げられるけれど、それ以前に製材されただけの無垢板であれば丸太により近い段階の素材であり、人の手だけで再現性を得やすく、持続可能な技術としての普遍性を持ちうると思うからだ。

そこで、どの程度の性能があるのかを知るには実験するのが一番。頭で考えるより、造って、壊すまで力をかけることで、頭で考えるだけでは想像もできなかったことが発見できる。毎年の木耐JCは、まさにその場でもあるが、今年は他にもいろいろと目で見て実感できる機会が増えたということ。年末であったことが、師走の時間をより厳しくしてしまったのだけれど。

試験体は3種類で4体。
床組のフレームは基本は同じで、2Pあるいは4P。その上に打ち付ける板の方法が異なる。
試験体1(2P):厚板の実部分に2本ビス留め (厚板を仕上げとして用いることを想定)
試験体2(2P):厚板の脳天釘3本打ち (厚板は床下地と想定)
試験体3(2P):試験体2に薄板斜め張り釘打ち (床下地の剛性を高める仕様と考えて)
試験体4(4P):試験体3仕様で4Pとする

2010_1214_100s.jpg2010_1220_ 019s.jpg
△試験体1△試験体2 
2010_1217_114s.jpg決められた幾つかの変形角で3回押し引きで繰り返しの荷重掛け、履歴を追いかけていく試験方法。最終的には大変形に至るまで力を加え、破壊するかどうかまでの状態を観察することになる。

そもそも木造住宅で床にどの程度の剛性を持たせる方が良いのかという議論はあるけれど、現状での幾つかの仕様の可能性は探っておくことで、設計あるいは施工における判断材料を得ることができる。

△試験体3
2010_1222_100s.jpg今の段階では最終結論(いずれNPOより発表予定)は出ていないが、実験に立ち会っての感想は、試験体1と試験体2は、ほぼ同等の荷重変形の特性を示した。床倍率としてはけっこう実用性が期待できるものと思われる。
△試験体4 

試験体3,4は思いのほか強くなりすぎる傾向は見られたが、廉価なラス下程度の薄い板の斜め張りでここまで効果が得られるのであれば、さまざまにコントロールできる余地があるという感触は得られた。
ちょうど、月刊建築技術12月号にも厚板を用いた構面実験の報告が出ているが、無垢材を構造要素として活用するための資料も増えつつある傾向にある。

年明け早々に、兵庫のEディフェンスで伝統構法による実大震動実験が3週に渡って行われる。石場立てによる試験体の挙動が注目されるところからのスタートだ。
動かないように造くりながら、動いてもよいようにする。なかなかテーマは広くて深い。数少ない実験から答えがポンと簡単に出るわけではないが、まさに「動き」がキーワードの一年の始まりとなりそうな感じだ。

posted by 太郎丸 at 15:15 | Comment(0) | MJK463ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。