2009年07月21日

香川県の土壁ネットワークの活動

平成15年告示1543号で土塗り壁の耐力壁の倍率が一定の数値が確保できるようになりました。告示では、具体的な仕様を規定することで、その範囲内で性能を提示しています。土塗り壁は全国の各地にある建築構法ですから、告示の仕様一本で、というわけにはいかない状況が出てきました。これはある程度は、想定されてはいたことと考えられます。小舞竹の幅や間隔などは、ある程度の許容範囲で各地域の特定行政庁の運用で判断してかまわないとだろうと思うのですが。地域固有のことであれば特定行政庁としては地方ルールで検討し、検証していくことぐらいできるだろうと。しかし、どうもそうはいきにくかったようです。
  
四国は香川の大工さんから聞いた話では、地域の仕様では告示と違うから、地域仕様ではダメという判断がなされて困っているというということがありました。小舞竹の幅やその間隔が若干異なるという程度のことのようでした。寸法をノギスで測り告示寸法と違うと言われたそうです。驚きましたし、大変残念なことです。求める性能の本質が分かっていないのだろうと思うのと同時に、告示化される場合に数値化はある程度は仕方ないと考えていますが、それを判断する側が何も考えられない状況(実態を知らないためでしょうか)にあるのかという現実にです。
県庁の星の織田裕二だったらそんなことは絶対に言わず解決策を探ると思うのですが・・・。

状況を打開するために、動き出したのが香川の土壁ネットワークです。地域仕様を確実に自分たちの手に取り戻すために検証作業の活動を行っています。その内容はホームページをご覧ください。
現在、今年の3月にできた報告書2冊も配布いただけるようです。
 2009_0717_1001s.jpg 2009_0717_1002s.jpg
 「土壁のつくりかた」 「土壁の耐震性向上のための
 技術的研究 報告書 概要版」

建築基準法は、現在は求められる性能さえ提示できれば、なんでもOKの時代であることは方向性としては正しいのですが、従来からある構法や工法に対して検証し、法としても整合性を求めるとするとするなら、それを担う対象は本来は誰になるのかということが上記でおきたことなのだろうと考えています。

多様な仕様のあるものに対して、狭い枠組みを作った場合の対応の方策も同時に用意しておくことが必要ということがよく分かった事例です。土壁ネットワークの場合には国交省の事業助成を活用することで、地域の大学とも連携し、実用に向けた対応をしていています。その活動には敬服するところです。ただし、この例は認識を共有できる人たちがネットワークを組めたことで実現していることを考えると、こういった連携が取れなければ実現が難しいという課題はそのまま残っています。
香川県で起きたことについては、行政側の知恵ある対応が必要でした。地域で使われている建築の技術と国の法が定めたルールとに食い違いがあると判断したならば、その間を埋める仕事こそ彼らの役割のはずだからです。食い違いがあって当たり前ぐらいで対応してもらわなければ、本業にかけたいエネルギーを他に取られてしまいます。これは他の府県でもまったく同じことでしょう。霞ヶ関に目を向けて足元に目を向けていないという巷間言われていることの例証となってしまったのではないでしょうか。
真摯な地元の声を聞けずして何が地方分権だ!・・・これはここでのテーマではありませんが、もっと地元でがんばっている人たちに自信を持ってもらいたい。

土塗り壁だけでなく、伝統的な木造というもっと大きなくくりで考えた場合には、さらに課題がでてくることでしょう。
多様な要素をどの程度の範囲で仕分けできるのか、できないのかなど前提の設定がたいへん難しい。地域なのか、造り手なのか、架構の形式なのか、要素の特徴なのか。共通するものもあれば特徴的な個別のものもある。時間軸で見ても、今行っていることがいつからこうしているのか、意外と最近のことであったりとか、多角的な視点でも見ていくことが求められます。

分かっていることは、全体を細分化して要素にまで細かくすることはできるかもしれませんが、細かな要素を組み合わせても全体として成り立つかどうかは分からないだろうということです。要素を組み合わせるときに一定の法則が必ずあるはずです。その法則が伝統構法として理に適ったものであるのかが重要で、この理を探る必要があります。禅問答みたいに考えがループしてしまいます。行ったり来たりは思考の常ですから、具体的なものを積み上げていくしかありません。
posted by 太郎丸 at 12:11 | Comment(0) | 木・素材のことなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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