2009年06月21日

「伝統構法」の議論が熱くなってきた

伝統構法の見直しが始まっている。何を見直すのか?
そもそも、伝統構法とは何であるのか。私自身も「伝統構法」あるいは「伝統的構法」という言葉を用いながら、木の家づくりの仕組みを表現しようとしています。

木の特性を捕らえながら、長所は活かし、欠点は補い補完しながら木を扱う職人たちによって受け継がれている技術、それを支える彼らの技能と感性、そして経験で裏打ちされた信頼。

社寺の流れもあれば、民家や町屋の流れもあり、それらに類似している要素もあれば、まったく異なる要素もあり、建築をつくる背景や支える空間規模、機能が異なれば、木の使い方やその構成の方法も変わるのは必然なのです。
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 海野宿(長野)小野宿(長野)
住みやすいということは、気候や風土に応答しながら、住まい手の生活の作法に応じて感じられるものであると考えます。南北に長く、幅の狭い国土の背骨に急峻な山脈を擁した日本では気候の特性が地域ごとに異なり、それが地域性となって生活の形やその舞台となる家の形にも色濃く特徴が表出することにもなるでしょう。また、その地域の地勢や社会的な位置にも影響されることになるはずです。脈々とその地域に受け継がれているものが現代でもあるものと思われます。

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 倉敷(岡山) 
 美観地区からははずれたところ
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 吹屋(岡山)
作り上げるのが人間である以上、ある程度の「型」があったとしても作り手としての個性もあり、要求される条件も異なるため、類似の素材を使ったとしても、出来上がった建築には個性が現れるものです。各地に今でも残っている町並みは、そういった民家が群として適度に表情の揺らぎを持ちながらも、ほどよい統一感のある景観としてつくられてきました。少なくとも、古い町並みといわれる街道沿いや地方の集落などは、単位としての一軒一軒は異なっても統一感を感じることができ、「美しい」と評される町並みとして存在し続け、その地域の資産として今ではかけがえのない価値あるもとなっています。

統一感は、使われる材料が現代と比べると限定されていたこともあるのかもしれません。また、町としての相場を崩すことは、作り手としてのプライドが許さないものでもあったでしょう。「相場崩し」とは一定の品質を保つルールであったと考えてもよいのかもしれません。こういった思想を持たない現代の町並みに対してしっくりとした感情を持て見ることができないものが多いのは、作り手というよりは売り手という、供給主体の違いによるものなのだと現状を無理やり理解もしています。しかし、そこには設計者もいれば、施工者という作り手が関わらなければ、家だって、町だってできないわけですから、どうも現代が持っている町に対する価値の思想がかつてとは異なっているのだと考えたほうがよいのかもしれません。
もし、そうであるならそういった町並みを作ってきた技術に対する評価も今と過去とではだいぶ異なると考えたほうがよいのでしょうか。美しいと思える町並みを再び私たちが手にするためには、社会的価値に対する大きな思想の転換が図られなければならないことになるのかもしれません。これはなかなか難しい問題です。

建て主にとって、家づくりは大いなる目的ですが、一軒で町ができるはずも無く、少なくとも設計する立場としては、町の中でどうありたいかは考えて、建て主と共にその地に合ったものがどういったものなのかは話し合っていかなければならないことです。

話を伝統構法に戻すと、少なくとも、古くから成立していた写真で見るような町並みを構成する要素としての「家」を成り立たせていた建築技術、建築技法は伝統的なものであると考えてよいだろうと考えます。

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 所沢(埼玉)
現在、建築基準法の中には、「木造」の規定があります。しかし、戦後バラックしか建てられなかった時代に、それなりの水準の基準として、昭和25年に制定されたものです。
もともとが、バラック(表現に問題はありますが)に対してスタートしたものです。このノートの中でちょうど戦後直後に建設されたの米軍ハウスについて書きましたが、そのような作り方の程度のものがその例になるかもしれません。その当時でも地方では、大工棟梁が骨太の構造材を使い、腕を振るって仕事をしていたはずで、そういった作り方に対して当時の基準法を適用していたとはどうも思えません。都市再生を急務としていた時代では田舎の家にまで手がまわらなかっただろうし、現場にまかせておけば、施主と大工の顔の見える関係で問題もなかったはずと想像できます。(これはあくまでも想像で根拠はありませんが)
社会が落ち着き、安定してきた中で徐々にさまざまな制度が現状に合わないものは見直されていくことになり、建築も台風や大地震の起こるたびに、基準が見直されて今に至っています。あくまでも最低基準としてのルールです。

1995年の阪神大震災は、木造にとっては大きな転換点となりました。古い木造家屋が倒壊し、多くの犠牲者を出したことを契機に研究対象として木造が注目され始めました。日本建築学会の木造に関する論文が急激に増えたといいます。特に、木構造に関する研究はさまざまな角度からなされるようになったと思います。

‘95年の暮れには、多度津で実大の振動台実験が行われ、少なくとも建築基準法に準じた作り方をしていれば、阪神大震災のある地点での揺れに対しては耐えることができるという結論に至っています。
建築もある一定の性能を満たせば、多様な作り方を可能にする制度へと変わり、平成12年には性能設計制度が導入され、可能性が広がりました。とはいっても、性能設計には、実験や計算などにより建築の性能を証明しなければなりませんから、住宅規模でその部分に費用を投下できる環境は、事業規模の大きなところは可能でも、多くの事業者にとっては実用性の小さな仕組みと言わざるをえません。性能証明のルートとは別に告示等による仕様規定がいままで以上に明確にされ、木造には縛りがきつくなったと実務側では感じる状況となりました。ここで、問題になったのは、決められた仕様というものがあまりにも数が少ないために、建築の自由度を狭めることになりやすいものでした。特に、昔ながらの造り方の骨太い木組みで架構を組み上げようというような場合には、既存の仕様では厳密には対応しきれない状況が顕在化したわけです。極端に言えば、今まで、結果としてある程度現場の裁量の範囲で対応できていたことが、細かく狭いルールに急に閉じ込められてしまい、窮屈で身動きしづらいも仕組みとなってしまったという印象でしょうか。本来であれば、多様にある日本の木造技術をこの段階で検証し、使える技術として用意しておく必要があったわけです。一部の研究者の間で、基準から落ちこぼれてしまったものを拾い上げ、基準として整備することに尽力してくれた成果がようやく実用面で活用できるようにもなってきました。しかし、まだまだ足りません。

もともとの基準法の成り立ちが質の低いものをある一定の品質にするためのものでしたから、その延長線上にあるものも考え方の基本の部分では変わりがありません。もちろん、性能で評価するというルートを用意したことで、法律としては建築全体を網羅できる仕組みにはなってはいます。

伝統構法と呼ばれる木組みの作り方は、もともとの基準法で蚊帳の外に置いておいてもよかったのだけれど、改正が加えられてきた現状の法律でそれらに対応するにはどうも不具合な部分が法律の仕組みとして表面に出てきてしまったと理解できるのではないでしょうか。写真に見るような建築は技術的には建築するのに何の問題もないのですが、法が解釈できる仕組みにはもともとなっていなかったということでしょう。
しかし、ようやく伝統構法への取り組みが本格化しました。昨年度から3ヵ年かけて伝統的構法の設計法の開発事業が進んでいます。昨年の終わりに伝統的構法住宅の実大による振動台実験(*1)も行われ、その結果と分析からどういったことを読み取り設計法に反映させるのかがとても重要です。
ただし、ここでも「伝統構法とは何であるのか」という問いがとても重要です。軸組構法と言ってしまえば共通にくくれそうですが、現代の木造は別物なのか。仕組みで同じところもあれば違いところもあるのか。それが何なのかを提示する必要があります。
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今井町(奈良)
 美々津(宮崎)

仲間といろいろ活動していますが、「伝統構法」に簡単には答えを出せないというのが正直なところかもしれません。作り手にもそれぞれに答えがあり、地域性もあります。要素をピックアップして組み合わせればよいというものでもなさそうです。ただし、一度、要素あるいは複数要素の集合体といった単位で切り出して見るという作業が必要だと考えています。少なくとも自分なりの答えを探ることが今の課題です。

・・・・・・
MJK463ノートを書きながら自分でも「伝統構法」について今の段階で頭を整理しようと考えていましたが、結局堂々巡りになりまとまりが無くなってしまいました。(反省)
尻切れトンボですが今日はここまでにします。

(*1)関連するHP:
 ・(財)日本住宅・木材技術センターの関連ページ
         http://www.howtec.or.jp/gijyutsu/dento/jikken.html
 ・木の家ネットの関連コンテンツ http://kino-ie.net/action/index2.html
posted by 太郎丸 at 18:35 | Comment(0) | 伝統構法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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